GA JAPAN 141
¥2,566(税込)
ついに宇宙基地登場!?と思った表紙は、20世紀少年なら知っている、1967年のモントリオール万博のアメリカ館。空から降りてきたような、宝物をしまいこんでいるような、今見ても、いろいろな想像が膨らみます。でも私たちの生活とは関係ない、非現実で機能性のないものなのか? いえいえ、実は富士山頂で長く気象観測していた施設もこのドームの末裔ですし、軍事施設など超機能主義的なものにも活用されてきました。その光と影があった徹底ぶりについても、今回の特集で明かされます。
■特集 [SEVEN DREAMS 建築の7つの夢]
バックミンスター・フラー
石山修武 「数理的世界主義と映像の力」
意図的に誤読した編集者たちの偉業|二人の原理主義者|フラーの純粋原理と建築の限界|フラーの原理は映像的だった|デス・スターが教えてくれたこと
石黒敦彦 「天体から分子まで貫く、離陸する空間の夢」
フラーの夢が茂らせた豊饒な枝葉|暗黙知に刻まれるアメリカ館|離陸の夢 飛行機でなく飛行船|グリッドの転換|新たなフラードームは生まれるか
レム・コールハース
SANAA 「歴史的に見て建築を救う」
考え方が伝わってくる|善悪を超えた凄さ|歴史的な現代の見方|レディメイドのオープンさ|個人とアノニマスの振幅
日埜直彦 「レムが示した夢と希望」
実践の中で再発見される建築|PoMo批判とロシア構成主義|カントの理性批判|ソーシャル・コンデンサーと都市の可能態|WOWchitecture|離接的な建築
アンドレア・パラーディオとトーマス・ジェファーソン
隈研吾 「新古典の模型で世界をマネージメントする」
土とのインテグレーション|大きな環境のマネージメント|アメリカを見切ったレム|ジェファーソンとライト
菊竹清訓
遠藤勝勧 「菊竹清訓の行動主義と実像」
菊竹清訓的な建築のとらえ方|自然を活かす建築|ヴィジョンの共有|都城市民会館での統合|理想の「かた」
内藤廣 「60年代が呼び起こす直観力とヴィジョンの意味」
直感先行でやってみる|海と地面|亜流ゆえの本流との接し方|ヴィジョンが求められる時
平泉
福嶋亮大 「サブカルチャー都市〈平泉〉」
プチ・キョウトではない独立国家|日本独特の価値変換|浄土教のテーマパーク|動物まで含めた浄土|物語として残った「平泉」
ナチス・ドイツとソビエト連邦
三宅理一 「コンスタンティヌスからチャウシェスクへ至る夢」
「帝国」の構造|複数の近代史|理念と実践|第一次世界大戦によるリセット|トート機関の重要性|強烈なロシア的「抑圧」|天安門広場と人民宮殿|不変な物理的実態としての「遺産」
アーキグラムとクロード・ニコラ・ルドゥー
藤森照信 「現実への違和感とリアリティ」
リアリティのある空想|精神を容れる器|大地から生え、浮遊する|現実への違和感のある人
今回の特集は「建築の7つの夢」、GA JAPANがお届けする歴史系特集シリーズです。今の日本の社会では、機能性優先でなるべく安価、そして想定外なことなんて起こらない、工業製品のような建築物が「当たり前」になっています(そんなことがありえるかは別にして)。そこで、人々がつくり出してきた、建築や都市が描いた夢の世界を、7つのトピックスから描き出します。フラー、レム、菊竹清訓さんなど、7つの夢たちは、実はどれも現代の世界と奥底で関わり、互いに連関し合っています。読んだら建築熱が上がること必至ですので、ご高覧あれ!
■作品
横浜市立大学 YCUスクエア 山本理顕
解説:「re-programming」 山本理顕
INSIDE VIEW:「学校の活動を刺激する空間の組み立て方を考える」 山本理顕+高橋玄
瑠璃堂 竹山聖
解説:「空の建築」 竹山聖
クローバーハウス MAD Architects
解説:「柔らかな屋根のある風景」 早野洋介
浮気保育園 藤本壮介
INSIDE VIEW:「建築と都市空間の現代的な関係に向かってる」 藤本壮介
認定こども園 愛徳幼稚園 隈研吾
解説:「小さな家の集まり」 珠玖優
INSIDE VIEW:「バラツキを生む対角線折りの屋根」 珠玖優
作品紹介は5題。
この4月から使われ始めた学校や幼稚園、保育園が多くなりました。
山本理顕さんの「横浜私立大学YCUスクエア」は、以前から提唱されている「システム建築」がアップデートされています。デザインを深堀するコーナー「INSIDE VIEW」では、社会を刺激するシステム建築の効用についても語られています。
竹山聖さんの霊園の管理棟は、小さいながらも空間の力を感じさせる作品です。原広司さんの元で「方向性空間論」を研究した竹山さんは、場所の存在の仕方からイメージして設計されたそうです。その思考が実は、具体的な組み立て方から外観の現れ方まで一貫されているのです。
■PLOT
「太田市美術館・図書館」編
設計:平田晃久、語り手:平田晃久
phase 2:実施設計及び施工法の検討
「小泉の家」編
設計:松岡聡・田村裕希、語り手:松岡聡・田村裕希
phase 2:ジャンプとチューニング
設計プロセスをリポートするPLOTは、若手設計者による2題。
平田晃久さんの「太田市美術館・図書館」は、工事現場で全体のヴォリュームが立ち上がってきたところ。ボックスに分割された美術館・図書館という施設が、ランドスケープ的なスラブに緩やかに開いていく。現場は非常に物質的ですが、それが活動のイメージと相まる、全体に風が抜けていくような設計から組み立てていったことが語られています。
松岡聡さん、田村裕希さんによる「小泉の家」は、前回のキューブ状の母屋とテラス状の低層棟の構成から激変。プランや空間構成という、設計の操縦方法のテクニックというより、それを操る時に何を考えていたか、という視点で話してもらいました。前回(GA JAPAN 137)の話と合わせて読んでいただけると、設計の裏側がよくわかります。
■TRAVELING AROUND THE WORLD
Venice, Italy GA photographers
■連載
エッセイ 地球の景色 10 藤本壮介
二川幸夫の眼 14 藤森照信
ロボットはコンピュータの夢をかたちにするか?14 アンズスタジオ
■GA広場
「カンプ・ノウ、その提案の核心とは?」日建設計+パスカル―アウジオ
カンプ・ノウ 新スタジアム
「都市の地下鉄の跡を公園にするチャレンジ」J・ラムゼイ+D・バラシュ
Lowline
GA広場では、日建設計が選ばれて話題になった、スペインのサッカークラブ、FCバルセロナの本拠地、カンプ・ノウの新スタジアムの計画を紹介。「どんな案か?」はネットなどでチラ見された方も多いはず。そこで、何が日建設計ならではの提案だったのか、何が課題で何が評価されたのか、ぶっちゃけたところを投げ掛けてみました。
176 total pages, 84 in color
ISBN978-4-87140-940-7 C1352
2016年7月1日発行
¥2,333+税