GA JAPAN 142
¥2,566(税込)
表紙の大仏は、高さ13.5mの石像阿弥陀如来。建築家が手がけたのは、元々おられた大仏を覆い隠す「丘の建築」です。安藤忠雄さんらしいスケール感のランドスケープで、空間としては思ったより小さく、しかし同時に広大でもあるように感じる建築。安藤さんはクライアントの想いに応える名手ですが、さすがに大仏を扱うのは難問ではないか。しかし、「頭大仏」という発想のスケールで空間に奥行きが生まれています。
■作品
真駒内滝野霊園 頭大仏 安藤忠雄
解説:「真駒内滝野霊園 頭大仏」 安藤忠雄
十和田市教育プラザ 安藤忠雄
解説:「十和田市教育プラザ」 安藤忠雄
北菓楼札幌本館 安藤忠雄・竹中工務店
解説:「北菓楼札幌本館」 安藤忠雄
森の光教会 隈研吾
解説:「薄灰色の街区に建つ赤茶色のチャペル」 隈研吾・坂本英史
INSIDE VIEW:「三つの隙間を設けた偏芯多角錐」 坂本英史・西川拓
金子コード浜松工場 roseroc 奥野公章
解説:「個性から全体へ」 奥野公章
INSIDE VIEW:「宙を飛べる壁の構成」 小西泰孝・奥野公章
梅郷礼拝堂 加藤詞史
解説:「場所を書き換えて柔らかな公共性を得る」 加藤詞史
INSIDE VIEW:「玉簾状の連続架構体の生成プロセス」 加藤詞史
作品は6題。安藤さんの3件はどれも日常生活の中にありそうですが、それぞれに独自の提案を着地させる幅を感じます。「十和田市教育プラザ」は、図書館と教育研修の複合施設。これまでも展開してきた、直方体をリニアに並べる構成や縁側空間が、北国である敷地条件やプログラムに対応して熟成されています。隈研吾さんの「森の光教会」、奥野公章さんの「roseroc」、加藤詞史さんの「梅郷礼拝堂」は、どれも周りからの見え方が変化する、ふくらみのあるワンルーム空間です。そのインターフェイスをつくるために凝らされた建築家の工夫は必見です。
■特集
[ヴェネツィア・ビエンナーレ 2016]
第15回ヴェネツィア・ビエンナーレ建築展について気鋭の論客たちが語る
[記事] ヴェネツィア・ビエンナーレの歴史
[座談会] 大西若人×小渕祐介×二川由夫
ビエンナーレ・ウォッチャーの3人|Democratization of KENCHIKU|日本館の展示選考|アメリカ館に観る建築のデッドエンド|日本館は特別表彰に値するか?|破壊ではなく尊重|アルセナーレの印象|建築の展覧会化に体する危惧|日本の体力不足
■特集
[ゼネコンの現在形] ゼネコンや設計事務所のキーパーソン9組が理想と現実を語る
世界初のイメージを具現化に
部材1本までこだわって統合する
清水建設 語り手:石谷貴行,山田眞基
「268オーチャードロード」を支える、エンジニアリングの先端とは
どのようにつくればいいか判らないデザイン|未体験ゾーンに取り組むシステム|熱帯に立ち上がるガラスボックス|宮大工的なつくり方?|設計施工のその先に
噂のスタジアムの真相に迫る
現代社会で力を発揮する棟梁的一体性
竹中工務店 語り手:中野達男,大平滋彦,松尾享
市立吹田サッカースタジアムのプロセスから、竹中工務店の真髄を紐解く
前代未聞、建設費未確定のローコスト・スタジアム|シンプルさを徹底する|PCaの集大成の現場|クライアントに建築を手渡すとは
今、大林組のBIMがすごい
本当の意味で3Dデータを共有する
大林組 語り手:本谷淳
スマートBIMの提案と実践に向けて
共有されないデジタル設計|日本の建築プロセスでBIMを適用する|海外進出のチャンス!?|詳細化の自動化|施工の自動化からAI化へ
高密度な合意形成へのKAJIMA的対応
フロント・ローディングによる設計領域の拡大
鹿島建設 語り手:上岡修,原嶋宏樹
「洗足学園音楽大学シルバーマウンテン・eキューブ」における三次元自由曲面の実現プロセス
インターフェイス型のコミュニケーション|メッシュリラクゼーション手法と定規丸鋼|鹿島建設の原理主義|実施図と施工図
大江匡さんに施工分野への進出について聞いてみた
ガラパゴス化を脱してつくる
プランテックアソシエイツ 語り手:大江匡
アトリエ派批判|設計施工一貫のメリット|施工の統合によるデザインの広がり
30年以上も伊東建築を支えてきたキーパーソンに独自のゼネコン観を聞いた
ゼネラリストの重要性
伊東豊雄建築設計事務所 語り手:東建男
ものづくりの雄との出会い|町の鍛冶屋のゼネラリスト魂|素材自体の力|宇宙船ビーグル号
「森舞台」から「新国立競技場」まで「隈建築の現場」を最古参のマネージャーが語る
環境に溶け込むディテール
隈研吾建築都市設計事務所 語り手:横尾実
ディテール・スケッチの効力|現場実務とマネージメント|プレイングマネージャー
ディレクターによる2つの学校の現場体験記
CAtの現場
CAt 語り手:大村真也
現場の追い回し|地元のゼネコン|スーパーゼネコン|ペーパーレス化とSketch Up|「設計者の現場監理」の重要性
山本建築を支えるパートナーにシステム建築の背景を聞く
建築家の設計と技術力
山本理顕設計工場 語り手:蜂屋景二
つくり方と図面の関係の変化|様々なつくり方をリードする|システムズ・ストラクチュアの誕生|スイスで見えてくる建築家の未来
特集は「ゼネコンの現在形」。
建築を設計することが、今もっともクリティカルに向き合うひとつが、「つくりあげること」ではないでしょうか。世界最高峰とも言われる建設技術は、今も先端のデザインを実現する土壌になり得るのか。総合建設会社が見据える未来、力を注ぐプロジェクトを通して、新時代のシナジーが描けるかをリポートします。また建設会社と協働する設計事務所のキーマンの方々にも登場いただき、設計事務所からの視点でゼネコン論を聞いています。
本特集では、登場いただいた4社以外に大成建設にも取材を申し込みましたが、ご検討いただいた結果、諸般の事情で辞退されました。
■LIVE PLOT
[特別座談会] ースタディのイマー 若手建築家の設計方法論に迫る
松岡聡・田村裕希 [小泉の住宅] vs 大西麻貴・百田有希 [GoodJob! センター]
■PLOT
「(仮称)湯の駅おおゆ」編
設計:隈研吾、語り手:隈研吾・須磨哲生・太田雄太郎
phase 1:庭と温泉の融合
「球体をめぐって」編
設計:SANAA、語り手:妹島和世・西沢立衛
phase 1:球体のヴォキャブラリー
デザインの現場をリポートするPLOTは、毛色の異なる3つを紹介。一つは、イメージの発想法、設計のポイントを、大西麻貴さん+百田有希さん、松岡聡さん+田村裕希さんの2組が、率直に聞き合う座談会。2人で意見が違った時の解消法といった裏話まで……。隈研吾さんは最新コンペ案について。妹島和世さん、西沢立衛さんは、現在進行中の3プロジェクトをピックアップして、彼らが気にしてきた「球体」というヴォキャブラリーの意味と変遷を探ります。
■TRAVELING AROUND THE WORLD
Oswiecim, Poland GA photographers
連載
エッセイ 地球の景色 11 藤本壮介
ロボットはコンピュータの夢をかたちにするか?15 アンズスタジオ
■GA広場
全体性と細部―生命力溢れる建築へ 藤野高志
鹿手袋の蔵
幾何学性を緩めたテキスタイルのケーブ 伊東豊雄・水谷靖昭
La Mode
試しながら立ち上げた壁 西沢立衛+金田充弘
木のパーティション
GA広場では、今秋オープンになる「台中国家歌劇院」で伊東豊雄さんが手がける舞台美術を紹介。注目の建築空間について、一番ヴィヴィッドな想いを含めて語っていただきました。オカムラのショールームでのインスタレーションは、西沢立衛さんと金田充弘さんによるナマっぽい展示。スゴくアートっぽいのに、来場者からは「いつ製品化されるのか?」「これは使える」という反応多数だったそう。その理由についても考えてみました。藤野高志さんの「鹿手袋の蔵」もライブ感溢れる建物です。単なるスタティックな改修でなく、進行形のデザインとでも言えるでしょうか。期せずして、今、とても気になる生命感あふれる設計法のヒントが散りばめられました。
184 total pages, 92 in color
ISBN978-4-87140-941-4 C1352
2016年9月1日発行
¥2,333+税